アニョハセヨ!韓国巡視船

大韓民国の海洋警察庁のフネを見てきました。

はじめに

新型コロナウィルスによる行動制限のない久々の夏休み。

みなさんはどこかへお出かけになったでしょうか?

私は8月20日~21日にかけて、韓国の済州島チェジュとうへ行ってきました。

正確に言うと、
クルーズ船【にっぽん丸】の済州島に寄港するコースに乗り込んでいたのです。

たった二日間という短い時間でしたが、韓国のコーストガード機関のフネも垣間見ることができました。

今回はこれをみなさまにご報告いたします。

済州島はどんなところか?

まず最初に済州島の基本情報から。

日本語では済州島さいしゅうとう

韓国語では제주도チェジュド

一般的にはチェジュ島と呼ばれるこの島は、朝鮮半島の南端に位置しています。

大きさは日本の香川県くらいで、古くから海上交通の中継地点でもありました。

白いアイコンは本部のあるインチョン市

また、この島はかつては朝鮮半島本土からの流刑地でもありましたが、今では韓国随一の観光地として栄えています。

流刑地といえば、日本でもヒットした韓流ドラマ『チャングムの誓い』で主人公:チャングムが追放されたのが済州島でした。

そして、
高校生が多数犠牲となったセウォル号沈没事故において、同船は修学旅行先としてこの島に向かう途上だったのです。

以上のように私たちもどこかで耳にしたことがある身近な島、それが済州島です。

済州地方海洋警察庁について

韓国のコーストガード機関:海洋警察庁(ヘヤンギョンチャチョン)は本庁の下に、
中部・西海・南海・東海、及び済州地方の5つの地方海洋警察庁が置かれています。

(※中部地方海洋警察庁の英訳はREGION-CENTRALなので、首都ソウルや本部所在地インチョンを管轄するという意味で「中央」と訳してもよい気がします。しかし、朝鮮半島全体の地理的な真ん中ということで中部地方なのでしょう。)

そして【済州地方海洋警察庁】の下に、【済州海洋警察署】【西帰浦海洋警察署】が置かれ、その下にさらに小さい機関に分かれています。


無理やり日本の海上保安庁に当てはめるなら、次のようになるでしょうか。


日本:海上保安庁韓国:海洋警察庁
国土交通省海洋水産省
本庁本庁
管区海上保安本部済州地方海洋警察庁
海上保安部済州海洋警察署
西帰浦海洋警察署
海上保安署
分室
済州警察署
西帰浦警察署
花順警察署
など


済州島の中央には韓国最高峰の漢拏山ハルラさんがそびえ、島は北の済州チェジュ市と南の西帰浦ソギィポ市に分かれています。

つまり、これまた海上保安庁に当てはめれば、【済州地方海洋警察庁】は本土から切り離れた南の島という意味で沖縄県の【第11管区本部】に似ています。

その管区本部のお膝元という意味では、【済州海洋警察署】【那覇海上保安部】

そして、最南端の出先機関ということでは【西帰浦海洋警察署】【石垣海上保安部】的な位置づけでしょう。

日本の【第11管区】がそうであるように、この済州島も小さいながら多くの艦艇が配備されており、この島の重要性をうかがい知ることができます。

艦番号シリーズ名固有名全長
5002イ・チョンホ150.5m
3002太平洋2号なし110.5m
3006太平洋6号なし110m
3012太平洋12号朱雀112.8m
済州地方海洋警察庁:大型警備艦



それでは私が実際に見ることのできた海洋警察庁のフネをご紹介していきます。


※以下に掲載した写真は当サイト管理人が撮影したものです。

※撮影は立入が認められている場所でのみ行っています。

【太平洋級】警備艦について

最初は私が乗船した【にっぽん丸】が入港・停泊した済州港にいたフネたちから。

にっぽん丸の船上から

こちらは済州国際旅客船ターミナルに係留されている【3002太平洋テピョンヤン2号】【3012太平洋テピョンヤン12号】です。

ヘリコプター搭載型ではないものの、全長約110mの大きさから【PLH02つがる型】に相当する大型警備艦です。

なお、海洋警察庁において警備救難活動に使用されるフネは警備艦・警備艇と呼ばれ、大型艦の番号は排水量と一連番号で構成されています。

例えば5000トン級の艦の一番艦は5001、2番艦は5002というように。

なので【太平洋】の2隻は3000トン級の2番艦と12番艦だと読めるわけですね。


海洋警察庁の専用埠頭

なお、
艦名については一隻ずつに与えられているわけではなく、基本的にはシリーズ全体の名称があってそれの1号・2号・3号…といったルールのようです。

ただし、特別な事情がある場合には個別の名前を与えられることもあり、たとえば3012号は朱雀チュジャクの別名を持っています。

かっこいいですね。

これは2012年9月24日に行われた「海洋警察の日」記念式典において命名されたものです。

この式典には当時の李明博イ・ミョンバク大統領も出席しており、南方の守護神である「朱雀」の名前には強い期待が込められているものと想像できます。

「第59回海上警察の日」記念式典
2012. 09. 24. 16:11

この日は「朱雀艦」と名付けられた韓国海洋警察の新造船が済州海洋警察署に配属され、海洋科学基地周辺の海域を引き続き警備する。
주작(朱雀)は南の守護神こと

「第59回海上警察の日」祝賀会「舞台裏」 – アジア・トゥデイ (asiatoday.co.kr)


3002と3012との違い

それでは2隻の細かいパーツを見ていきましょう。

そもそも、
【3002】は1998年、
【3012】は2012年の就役ということで、12年もの開きがあります。

機関砲台・艦橋部分

2隻のわかりやすい違いは機関砲台。

手前の【3002】は手動操作型のようですが、奥の【3012】は遠隔自動操縦型のようです。

そして艦橋横側面には韓国語で해양 경찰ヘヤンギョンチャル(海洋警察)と書かれています。


東埠頭公園より煙突・搭載艇

後部の煙突横には搭載艇が備えられており、搭載艇にも「海洋警察」の字があります。

その他、
フネの全体として旧型の【3002】は丸みを帯びており、【3012】の方は角ばっています。

まぁこのあたりの形状の差は造船業界のトレンドによるものですね。

西帰浦の太平洋6号

さて、
済州島ではもう一隻【3006太平洋6号】も見ることができました。

こちらは島の南側を管轄する西帰浦ソギィポ海洋警察署】に配備されています。

山房山ふもとの山房烽火台から

3006太平洋6号

観光地として有名な山房山サンバンさんのふもとにあるファシュン金砂ビーチには、海洋警察庁の専用埠頭が新設されています。

ここには【3006太平洋6号】【5002イ・チョンホ】が配備されています。

【イ・チョンホ】は全長が150.5mある海洋警察庁最大の艦ですが、残念ながら不在だったので撮影できませんでした。

その他の小型艇

ここからは小型艇をご紹介していきます。

まずは済州港にいた【防除バンジェ17】。

済州港にて

バンジェ17

主に港内での油回収作業や海洋汚染防止に従事するフネのようです。

放水筒も装備していることから消火活動も可能と思われます。

つまり海上保安庁で言えば【PC22はまぐも型】や【FL01ひりゆう】に似た役割を担っているものと推察されます。

次に【ヘウリ201】。

先ほどの西帰浦海洋警察署の専用埠頭に他のフネとともに停泊していました。

ファシュン金砂ビーチ埠頭

해우리ヘウリ」は海洋警察庁のマスコットキャラクターで、男性警察官の名前”ヘウリ”から採られているようです。

これまた海上保安庁で言えば「うみまる」に当たる存在。

左:ヘヌリ(女性)と右:ヘウリ(男性)
상징 표시 (kcg.go.kr)



全長が42mであること、機関砲を備えていることからすると【PS31しもじ型】に近いと思われます。

済州港にて

なお、同型と思われるフネが2隻、済州港にも配備されていました。

おわりに

以上、駆け足でしたが、いかがだったでしょうか。

わずか二日間の日程、ツアー旅行の行程の中で撮れる限り撮ってきました。

本当は済州市街の船溜まりに停泊している小型艇も撮影したかったのですが、時間が夜だったこともあって断念しました。

外国人が夜中に港をウロウロしていたらきっと怪しまれるでしょうし、もし現地の警察官に職務質問されても私の英語力では弁明できる自信がないので…。
(+_+)

そもそも鉄道ファンの業界で、海外の鉄道車両はその国の軍事機密に当たる場合もあるから撮影注意!なんて話も聞いたことがあります。

なので用心にこしたことはないかなぁ、と。

みなさまも海外で巡視船や軍艦を撮影する際はお気をつけて。

とりあえず今回はフネの話が中心でしたが、いずれ海洋警察庁そのものについてもご紹介したいと思います。

【参考動画】

済州海洋警察署チャンネル【訪問ホワイトカフェ】防除17号キム・グンソプ主任に会いました。 きれいな海のために現場で汗を流すキム・グンソプ主任。

海洋警察庁の公式動画。
コーヒー片手に様々な職員の素顔をのぞくインタビュー集です。

リラックスした表情で自然なやりとりがとても良いですね。

海上保安庁にも似たような業務紹介動画はありますが、インタビューを受けるみなさんはどこか緊張気味。

海上保安庁でも参考になるのでは?

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