【オセアニア編】CGGSで考えるCG機関の分布

過去最多の参加を得たCGGSⅢが閉幕しました。会合に参加したCG機関を地域ごとに紹介していきます。



はじめに

世界海上保安機関長官級会合への参加国・不参加国を取り上げ、俯瞰するシリーズ第2回。

今回は日本にとって身近なようで意外に接することの少ない大洋州オセアニア地域。

オーストラリアやニュージーランドのことはよく知られていますが、それ以外の国々はどうでしょうか?

どこにどんな国があるか、
みなさんは正確に言えるでしょうか。

正直なところ私は漠然としかイメージできませんでした。

ただ最近ではワールドカップの盛り上がりもあって、ラグビー強豪国の多いことでも知られるようになりましたね。

・オーストラリア
・ニュージーランド
・フィジー
・サモア独立国
・トンガ



強豪国に共通しているのはラグビー発祥地であるイギリスの影響を受けていること。

かつて同国の植民地・保護領などであった歴史的経緯からイギリス文化が根付いており、それゆえにラグビースポーツもまた人々に浸透しているというわけです。


こうした例に限らず、
このオセアニア地域は従来イギリスやアメリカなどと友好関係にある国が多く、特にオーストラリアを中心として結束しているかに思われていました。

しかし、
近年この結束の足並みにバラつきが見られます。

果たしてこの地域で今何が起きているのか?

それをコーストガード機関巡視船をキーワードとしながら、読み解いていきましょう。

おことわり

以下に示す参加国一覧表は当サイト管理人が独自に作成したものです。

作成に当たっては、海上保安庁・日本財団の共同発表資料pdf及び
『世界の海上保安機関の現状に関する調査研究報告書』を参考としました。
(以下、『報告書』と呼びます。)

世界の海上保安機関の現状に関する
調査研究報告書

岩並秀一・大根潔 共著
(公財)海上保安協会 発行
A4版 63頁 カラー画像付

書籍等 :: 世界の海上保安機関の現状に関する調査報告書 (xn--p8j1fc3cznsc6g4e.jp)


次に、
参加国名等の邦訳については、公表資料に準拠しつつも当サイト管理人が一部修正しています。

(誤:コロモ連合→正:コモロ連合 など)

最後に、
「組織形態」の項目で軍事・国境・治安・警察・独立・調整とあるのは、『報告書』における分類を参考に表記したものです。


ただし、この『報告書』の内容はCGGSⅡ終了後時点でのものであり、CGGSⅢ初参加国については、当サイト管理人が独自に判断し分類しています。


【組織形態の分類】

①軍事機関 傘下型「軍事」
軍事機関 本体または
その傘下の実働勢力を有する機関

②国境警備機関 傘下型国境
国境警備機関 本体または
その傘下の実働勢力を有する機関

③治安警察機関 傘下型「治安」
治安警察機関 本体または
その傘下の実働勢力を有する機関

④警察機関 傘下型警察
警察機関 本体または
その傘下の実働勢力を有する機関

⑤独立機関型「独立」
上部機関が実働勢力を有しない機関であって、
①~④の機関形態以外の機関

⑥調整機関型「調整」
他のCG機関間の調整を行うことを任務とする機関

オセアニアとはどんな地域か?

出典:オセアニア地図 – 世界の国旗 (asahi-net.or.jp)
参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1オーストラリア
国境警備隊/
海上国境司令部
国境
調整
2クック諸島警察警察
3フィジー共和国海軍軍事
4キリバス警察隊警察
5マーシャル諸島
警察局
警察
6ミクロネシア連邦
国家警察
警察
7ナウル警察警察
8ニュージーランド
王立海軍
軍事
9ニウエ警察警察
10パラオ司法省
海上保安・魚類
野生動物保護部
独立
11パプアニューギニア
国防軍
軍事
12サモア警察警察
13トンガ王国軍軍事
14ツバル警察警察
15バヌアツ警察警察
オセアニア地域

まず、
このオセアニア地域の特徴は大小様々な島嶼国家で構成されていること。

そしてCG機関は警察機関傘下型が多いこと。

ただ、Googleマップを使用してその分布を俯瞰しようとすると、国土が小さすぎて地図上に表示されません。

逆に国土の詳細を確認できる程度にズームアップすると、広大な太平洋上における位置がつかみにくくなってしまいます。

これが意識上にも地図上にも、オセアニアの国々の存在を感じにくくさせているのです。



そこで、
よりこの地域を理解するために少しずつ解像度を上げて説明していくことにします。


出典:ファイル:太平洋文化圏.jpg – ウィキメディア・コモンズ (wikimedia.org)より


最初に、
オセアニア地域はオーストラリア大陸と3つの地域に区分されます。


・ミクロネシア(Micro-nesia)
→小さな島々という意味

・メラネシア
(Mela-nesia)
→黒い(肌の人々が住む)島々という意味

・ポリネシア(Poly-nesia)
→多くの島々という意味


~nesiaはギリシャ語で島を意味する、
“ネソス”に由来すると言われてます。

それに接頭語を当てはめたものが地域名となっているのです。


次にオセアニアを4マス表で表現すると下図のようになります。


ミクロネシア
グアム準州
パラオ・FSM・RMI
ナウル・キリバス
ポリネシア
ハワイ州

メラネシア
パプアニューギニア
ソロモン諸島
バヌアツ・フィジー



ポリネシア
ツバル
サモア独立国
ニウエ
トンガ・クック諸島

NZ       
FSM…ミクロネシア連邦、RMI…マーシャル諸島共和国



あるいは、
日本に近いのがミクロネシア
オーストラリアに近いのがメラネシア
ハワイからニュージーランドまでを含むのがポリネシア

…と、
ざっくり理解することもできるでしょう。
※キリバスやパラオは2つの地域にまたがっています。


以上を踏まえた上で、
オセアニアのCG機関の分布図を俯瞰してみると↓このとおり。

CG機関分布図

それでは以下、
各地域ごとに特徴的なCG機関をご紹介していきます。

ミクロネシア地域

出典:オセアニア地図 – 世界の国旗 (asahi-net.or.jp)より一部抜粋

参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1キリバス警察隊警察
2マーシャル諸島
警察局
警察
3ミクロネシア連邦
国家警察
警察
4ナウル警察警察
5パラオ司法省
海上保安・魚類
野生動物保護部
独立
ミクロネシア地域参加国



まずは4マス表の左上、
日本に近いミクロネシア地域の国々。

一つ一つの島は地図上に表示させるのが困難なほどの小ささ。

しかし、それが広く点在しているため国の領海面積はそれなりの大きさになるのです。

そして、この地域で最大の領域を持つ国家がミクロネシア連邦

同国と日本との少し意外なつながりをご紹介しましょう。



親日国家:ミクロネシア連邦

Federated States of Micronesia’s National Police
Malitime wing

ミクロネシア連邦国家警察
海事部門
https://gov.fm/


ミクロネシア連邦(FSM)は4州から成る連邦制国家です。

そして、パラオ司法省に属する【国家警察】がCGGSⅢに初参加しました。


なお同国には独立した海上保安機関は無く、軍隊を保有していないため海軍組織もありません。

そのため【国家警察】の海事部門が海上保安業務を担当する警察機関傘下型です。

FSM・マーシャル諸島・キリバス・ナウル

マルチポリスCG(軍隊なし)

ただし、
ミクロネシア地域の国家規模に応じて警察組織も小規模です。

そのため、
警察組織本体をCG機関とみなすのか、
その下部組織をCG機関をみなすのか分析は困難です。

一応、当サイトでは警察組織本体に含まれる部門が海上保安業務を担い、警察組織そのものがCG機関であると認識しています


”建国の父”の名前

ここで話は変わって、
ミクロネシア連邦の巡視船にご注目。

トシヲ ナカヤマ
 TOSIWO NAKAYAMA


どうみても日本人的な名前、
”ナカヤマ トシヲ”と書いてあります。

実はこのナカヤマ氏とは、
ミクロネシア連邦の初代大統領のこと。

President Tosiwo Nakayama
ミクロネシア連邦政府 – ホーム (gov.fm)



そもそも1914年~1945年の約30年間、日本が現在のミクロネシア連邦・パラオ共和国・マーシャル諸島共和国の地域を【南洋群島】として統治していました。

そんな時代に貿易会社に勤めていた中山正実氏が来島、現地の方との間に日系二世として生まれたのがトシヲ・ナカヤマ氏です。

その後、ナカヤマ大統領は国際連合およびアメリカの信託統治下にあった同国の独立のために尽力。

独立を見届けた翌1987年に大統領職を退きました。

つまり、
このような建国の父の名が、
同国の最大・最新鋭の巡視船に与えられているということなのです。

巡視船の初入港を待つ人々

在ミクロネシア連邦オーストラリア大使館フェイスブックより

【参考文献】
小林泉
『南の島の日本人
もうひとつの戦後史』
産経新聞出版 平成22年8月14日第1刷


ミクロネシア3か国の国際関係

さて。

先に見たように、日本がかつて【南洋群島】として統治していた地域は、現在では3ヵ国に分かれて独立しています。

・ミクロネシア連邦
・マーシャル諸島共和国
・パラオ共和国


これら国は細かな違いはあるものの、3つの共通点を持っています。



第1に、
独立に際してアメリカと
自由連合盟約じゆうれんごう めいやくを結んだこと。

自由連合盟約(Compact of Free Association)とは、アメリカ合衆国から財政支援を受ける一方で、国防と安全保障の権限を期限付きながら同国に委ねる協定です。

これを3ヵ国が個別にアメリカと締結しており、いずれの国にも独自の軍隊は存在しません。


第2は、
オーストラリアから巡視船の供与を受けていること。


そもそも巡視船【TOSIWO NAKAYAMA】は、オーストラリアの造船会社オースタル社のOPVです。

OPVとはオフショア・パトロール・ヴェッセルの略で、沿岸警備用に開発された船舶の総称。

特にこのオースタル社のOPVは、
ガーディアン級パトロールボートと呼ばれています。


そしてこの【ガーディアン級】が、豪州政府の太平洋海洋安全保障プログラムの一環としてオセアニア各国へ供与されているわけです。

なお、2018年から始まった供与計画により、既に21隻が運用されています。


パラオ共和国

Palau State Ship “PSS Remeliik II ,001 “

※↑パラオ共和国の日系二世ハルオ・イグナシオ・レメリク初代大統領に由来。



マーシャル諸島共和国

Republic of the Marshall Islands ship “RMIS JELMAE”

※↑マーシャル語「挑戦」の意。


第3の共通点として、
日本政府も中型巡視船を供与しています。


のみならず海上保安業務を遂行するための庁舎建設もパラオとマーシャル諸島で行われており、供与した船艇の整備修理講習も行われています。

パラオ語で「有能で勇敢な鮫」の意

以上の国際関係をまとめると、
現在のミクロネシア地域、特に上記3ヵ国については米豪日の影響力が強固なことがわかります。

それはつまり海洋進出を目指す中国の影響が及んでいないこと意味しています。

では逆に中国の影響力が増している国はどうなっているでしょうか?

それを次のメラネシア地域で見ていきたいと思います。

【参考文献】
公益社団法人 日本海難防止協会
『2022年度 ミクロネシア3国の海上保安能力強化支援 事業報告書』
2023年3 月


メラネシア地域

出典:オセアニア地図 – 世界の国旗 (asahi-net.or.jp)より一部抜粋
参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1フィジー共和国海軍軍事
2パプアニューギニア
国防軍
軍事
3バヌアツ警察警察
メラネシア地域

次に4マス表の左下、
オーストラリアに近いメラネシア地域から。

ここではフィジー共和国に注目してみます。

中堅国家:フィジー共和国

Republic of Fiji Navy
フィジー共和国海軍
https://www.rfmf.mil.fj/

Republic of Fiji Navy Ship ”RFNS 401 Savenaca”

Republic of Fiji Navy Ship ”RFNS Kacau”



フィジーはパプアニューギニアと共にオセアニアにおける中堅国家です。

豪州やNZには及ばないものの、他の島嶼国よりは経済的な発展を遂げており、独自の軍隊も保有しているのが特徴です。

そしてフィジーでは警察組織ではなく、海軍に海上保安業務が任されています。


マルチネイビーCG

すなわちフィジーのCG機関は海軍本体が海上保安業務を兼務する形での軍事機関傘下型です。

地域外交の舞台

フィジーについて特筆すべきは、太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局が置かれていること。

PIFは南太平洋の独立国および自治政府を対象にした地域経済協力機構であり、事務局が所在する首都スバは外交の舞台でもあります。

さらにイギリスの植民地だったこともあり、現在でもフィジーはイギリス連邦(Commonwealth of Nations)の一員です。

そのためフィジーでは紅茶を飲む習慣やラグビースポーツが根付いているのです。


各国の国旗



こうした背景から、同じくイギリス連邦を構成する豪・NZとは友好的な関係にありました。

しかし2006年に軍事クーデターが勃発し、これを非難する両国との関係は冷え込みます。

この結果フィジーはPIFやイギリス連邦への参加資格を失いますが、この期間に内政不干渉を謳う中国との関係が深まるのです。

そして2014年以降のPIF・イギリス連邦復帰後も中国の影響は残ります。

フィジー海軍艦艇をめぐる駆け引き



その一例が、
2019年にフィジー海軍に寄贈された水路測量艦【RFNS Kacauカカウ】です。

この【カカウ】は戦闘艦ではないものの、フィジー海軍艦艇の中では最大。

翌2020年に供与を受けたガーディアン級【RFNS Savenacaサヴェナカ】と並んだ写真でも、全長がわずかに上回ってることがわかります。

左から2番目【カカウ】、3番目【サヴェナカ】
メレセイニ・ソコイラギがフィジー海軍で2人目の女性士官に就任 (fijivillage.com)

なお、
哨戒艦【サヴェナカ】の全長は39.5m。

一方、測量艦【カカウ】については、類似の中国人民解放海軍のミサイル艇と同じく43mではないかと私は推測しています。



さてここからは私の想像ですが。

フィジーへの艦艇供与に当たり、中国としても戦闘行為を想定する哨戒艦では、豪州・米国を刺激すると考えたのではないでしょうか。
(※サヴェナカに固定兵装はありませんが、機関砲など据え付ける台座はあるとのこと)

しかし補助艦艇である測量艦ならば、そうした遠慮も少なくて済みます。

それでいてフィジー艦隊の中で最大となれば、やはり中国の存在感を陰に陽に示すことができると思うのです。

ただし、2隻目のガーディアン級の供与が決定されており、少なくとも隻数ではオーストラリアも負けてはいません。

このように、
一国の海軍に供与される艦艇の内訳からも、中国とこれに抗する国々(米英豪など)の綱引きを見て取れるように思います。

米英豪そして日本に共通するのは、
民主主義・人権の保護・法の支配を重視する価値観を持つこと。

ところで、
同様の価値観に立つ存在として中華民国(台湾)があります。

それでは次のポリネシア地域からは、この台湾と友好的な国をご紹介しましょう。

注.
フィジーのCG機関は海軍であるため、供与された船舶を次のように表現しています。

・巡視船→哨戒艦
・測量船→測量艦

ポリネシア地域

出典:オセアニア地図 – 世界の国旗 (asahi-net.or.jp)より一部抜粋
参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1クック諸島警察警察
2ニュージーランド
王立海軍
軍事
3ニウエ警察警察
4サモア警察警察
5トンガ王国軍軍事
6ツバル警察警察
ポリネシア地域


ニュージーランド以外は
少し馴染みが薄いポリネシア地域

最近では、
2022年にトンガ王国沖の海底火山が大爆発し、日本にも「津波」が押し寄せたのが記憶に新しいところ。

このポリネシア地域からは、
島の面積が特に小さい国:ツバルを取り上げます。

英国文化を引き継ぐ国:ツバル

Tuvalu Police Service
Maritime Wing
ツバル警察
海事部門
https://www.facebook.com/tuvalugov/
https://dfa.gov.tv/index.php/transnational-crime-and-border-security/

Her/His Majesty’s Tuvaluan State Ship
” HMTSS 802 Te Mataili II ”


ツバルもまた【ガーディアン級】の供与を受けており、それを警察組織の海事部門が運用しています。

同国にも軍隊は存在しないため、典型的な警察機関傘下型のCG機関と言えます。


ところで、
巡視船【テ・マタイリⅡ】と、警察官たちの制帽に同じ格子状の図柄があるのに気づかれたでしょうか。

これはイギリス文化圏では
”Sillitoe tartan”(シリトー・タータン)と呼ばれ、警察組織などを表すデザインとして認知されています。

そしてツバルはイギリス連邦の一員であるため、警察制度のみならず制服などのデザインにも影響を受けているというわけです。


なお、
シリトー・タータンを船体にデザインしている国は他にもあるのでご紹介しておきます。

キリバス


ツバルと台湾と中国

さてツバルと言えば、
地球温暖化による海面上昇により「沈みつつある島」として、かつてよく報道されていました。

しかし最近では台湾との親交が深い国としても知られるようになっています。

例えば近年の報道でも次の通り。

ツバルが中国企業の人工島建設提案を拒絶、親台湾姿勢を堅持
2019年11月22日午前 8:36

ツバルのコフェ外相は21日、中国企業から提案された海面上昇に対処するための人工島建設計画を拒絶したと明らかにした。

中国はこうした申し出を通じて、ツバルなど台湾と外交関係のある太平洋の島国を取り込もうとしているが、コフェ氏は台湾支持の姿勢を鮮明に打ち出し、同様になお台湾と外交関係を維持しているマーシャル諸島、パラオ、ナウルの3カ国との連携を強化していく方針を打ち出した。

ツバルが中国企業の人工島建設提案を拒絶、親台湾姿勢を堅持 | ロイター (reuters.com)


反対に、
フィジーに続きキリバスやソロモン諸島といった国が中国との関係を深めています。

中国寄りの態度を示す国が増える中、ツバルのように明確に台湾を支持する国はかえって珍しいと言えるでしょう。

そもそもツバルは1978年の独立以来、台湾と一貫して外交関係を有しています。

この外交方針のブレの無さも注目を浴びている一因かと思われます。

ただ冷徹な見方をすれば、
ツバルはツバル自身の利益を考えての選択であることを忘れてはなりません。

なお、
中国・台湾の問題に相対するとき、
従来それはどちらを国家承認するか?という選択でした。

しかし今やこの問題は、
中国による覇権システムに乗るのか、
米国を中心とする枠組みを維持するのか?
という新たな選択肢を各国に突き付けています。

改めてツバルが今後どのような選択をとるのか注目されます。


CGGSで読むオセアニア

参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1オーストラリア
国境警備隊/
海上国境司令部
国境
調整
2クック諸島警察警察
3フィジー共和国海軍軍事
4キリバス警察隊警察
5マーシャル諸島
警察局
警察
6ミクロネシア連邦
国家警察
警察
7ナウル警察警察
8ニュージーランド
王立海軍
軍事
9ニウエ警察警察
10パラオ司法省
海上保安・魚類
野生動物保護部
独立
11パプアニューギニア
国防軍
軍事
12サモア警察警察
13トンガ王国軍軍事
14ツバル警察警察
15バヌアツ警察警察
オセアニア地域

台風の目:ソロモン諸島

改めてオセアニアの国際情勢を眺めてみると。

この地域はイギリスを発祥とする歴史的な文化や制度を引き継ぎつつ、現代的な国際関係としてはアメリカやオーストラリア・NZが強い影響力を及ぼしています。

そして、その基盤の上にPIFのような地域独自の枠組みによって、太平洋諸島国は比較的まとまっていると思われていました。

しかし。

メラネシア地域の国:ソロモン諸島がアメリカ沿岸警備隊の巡視船カッター寄港を拒否するというニュースが流れました。

ソロモン諸島、
グアムに拠点を置く米国沿岸警備隊のカッターの寄港を拒否
2022年8 月26日

グアムを本拠地とするUSCGのカッター【オリバー・ヘンリー】は、ガダルカナル島への定期物流寄港の予定であると、ホノルルの第14管区の広報担当クリスティン・カム中尉が木曜日の電子メールで述べた。

「ソロモン諸島政府は、ホニアラでの船舶への給油と食料補給のための外交許可を求める米国政府の要請に応じなかった」とカム中尉は述べた。

「それに応じて、【オリバー・ヘンリー】は給油と補給のためパプアニューギニアへ目的地を変更した。」とも。

※原文を管理人が適宜意訳した。

Stars and Stripes | The U.S. military’s independent news source. (www-stripes-com.translate.goog)

ソロモン諸島の寄港拒否の背景には2019年の中国との国交樹立、さらには2022年4月の安全保障協力協定の締結があるとみられています。

特に同国のマナセ・ソガバレ首相はアメリカへの反発心をあらわにしており、2023年7月には中国警察の支援を受ける治安維持協定を締結。

そして11月6~10日の太平洋諸島フォーラムにも首相は出席せず、外務大臣を派遣するにとどめています。



さて。

ひるがえって考えてみると、
ソロモン諸島は2023年10月31~11月1日のCGGSⅢにも不参加。

と言うより、
オセアニア独立国16ヵ国の内、ソロモン諸島だけが過去一度も参加していません。


王立ソロモン諸島警察
(CGGS未参加国)

このことがソガバレ首相の強硬な態度と関係しているのかは不明です。

しかし、
日本から最も遠く離れたオセアニアの国:クック諸島ですら参加しているので、やはりこれは特異なことのように感じられます。


専門家たちの外交舞台

それでは、
ソロモン諸島はこのまま中国に傾斜していくのでしょうか?

再び従来の枠組みの中へ戻ってくることはないのでしょうか?


それは結局のところ、
ソガバレ首相の意向と国民がそれを支持するかどうかにかかっています。

ただし、
私が一つ指摘しておきたいのは、外交チャンネルとしてのソロモン諸島警察の存在です。

軍隊を持たないソロモン諸島においては、警察組織が唯一の実力組織だと言え、重要な政治的アクターにもなり得ます。

その一方で、
太平洋諸島地域には
PICP(Pacific Islands Chiefs of Police)という地域機関も設立されています。

(日本語への公定訳が見当たりませんが、【太平洋諸島 警察署長会合】とでも表現できそうです)

このPICPは太平洋地域の警察署長が一堂に会し、情報交換、学習情報の共有、地域協定の形成を行う場。

設立から50年の歴史を有し、太平洋諸島フォーラム専門家作業部会にも貢献しています。

このような場における、
警察官同士の横のつながりがソロモン諸島を「説得」できる外交チャンスになるかもしれません。

太平洋諸島 警察署長会合



さらに私としてはPICPの活動を見守りつつ、国家の首脳たちによる駆け引きとは別の外交舞台としてCGGSも機能できるのではないかと考えています。


すなわち、
プロフェッショナリズムに裏打ちされた者たちの対話交流する場が、国家の外交方針に影響を及ぼす役割に期待しているのです。

このような観点からも、
ソロモン諸島警察をCGGSの枠組みに招き入れることが、今後の課題だと言えそうです。

第3回 世界海上保安機関長官級会合


《つづく》

CGGS参加国一覧

地域参加機関名組織
形態

2017
H29

2019
R1

2023
R5
1北米カナダ沿岸警備隊独立
2北米アメリカ沿岸警備隊独立
3中米バハマ国防軍軍事
4中米コスタリカ沿岸警備隊独立
5中米エルサルバドル海軍軍事
6中米グアテマラ国防軍軍事
7中米ハイチ海運局独立
8中米ジャマイカ国防軍沿岸警備隊軍事
9中米メキシコ海軍軍事
10中米セントクリストファー・
ネービス国防軍沿岸警備隊
軍事
11中米セントビンセント及び
グレナディーン諸島警察
沿岸警備隊
警察
12中米トリニダード・トバゴ国防軍
沿岸警備隊
軍事
13南米アルゼンチン沿岸警備隊独立
14南米ブラジル海軍軍事
15南米チリ海軍
海上領域商船総局
軍事
16南米コロンビア海軍軍事
17南米エクアドル海軍軍事
18南米ガイアナ国防軍軍事
19南米パラグアイ海軍軍事
20南米ペルー港務沿岸警備総局軍事
21アジアバングラデシュ沿岸警備隊独立
22アジア王立ブルネイ警察隊警察
23アジアカンボジア国家警察警察
24アジア香港警察/海上部警察
25アジア中国海警局治安
26アジア中国海事局独立
27アジアインド沿岸警備隊独立
28アジアインドネシア海上航空警察警察
29アジアインドネシア運輸省
海運総局警備救難局
(KPLP)
独立
30アジアインドネシア海上保安機構
(Bakamla)
独立
調整
31アジア日本海上保安庁独立
32アジア韓国海洋警察庁独立
33アジアラオス公安省独立
34アジアマレーシア海上法令執行庁独立
35アジアモルディブ国防軍沿岸警備隊軍事
36アジアミャンマー海事局独立
37アジアパキスタン海上警備庁独立
38アジアフィリピン沿岸警備隊独立
39アジアシンガポール警察沿岸警備隊警察
40アジアシンガポール海事港湾管理局独立
41アジアスリランカ沿岸警備隊独立
42アジアタイ国家警察/海上警察部警察
43アジアタイ海上法令執行司令センター調整
44アジアタイ海事局独立
45アジア東ティモール国家警察
:海事警察ユニット
警察
46アジアベトナム沿岸警備隊独立
47大洋州オーストラリア国境警備隊
/海上国境司令部
国境
調整
48大洋州クック諸島警察警察
49大洋州フィジー共和国海軍軍事
50大洋州キリバス警察隊警察
51大洋州マーシャル諸島警察局警察
52大洋州ミクロネシア国家警察警察
53大洋州ナウル警察警察
54大洋州ニュージーランド王立海軍軍事
55大洋州ニウエ警察警察
56大洋州パラオ司法省
海上保安・魚類野生動物保護部
独立
57大洋州パプアニューギニア国防軍軍事
58大洋州サモア警察警察
59大洋州トンガ王国軍軍事
60大洋州ツバル警察警察
61大洋州バヌアツ警察警察
62中東バーレーン沿岸警備隊独立
63中東イラン沿岸警備隊国境
64中東ヨルダン海軍軍事
65中東オマーン王立警察沿岸警備隊警察
66中東カタール沿岸警備隊独立
67中東サウジアラビア国境警備隊国境
68中東トルコ沿岸警備隊独立
69欧州アゼルバイジャン国家国境庁国境
70欧州ベルギー沿岸警備隊調整
71欧州エストニア警察国境警備隊国境
72欧州フランス海洋事務総局調整
73欧州ジョージア沿岸警備隊国境
74欧州ドイツ連邦警察警察
75欧州ギリシャ沿岸警備隊独立
76欧州アイスランド沿岸警備隊独立
77欧州イタリア沿岸警備隊軍事
78欧州ラトビア国境警備隊国境
79欧州リトアニア国境警備隊国境
80欧州マルタ国軍軍事
81欧州オランダ沿岸警備隊調整
82欧州ノルウェー王立海軍
沿岸警備隊
軍事
83欧州ポーランド国境警備隊国境
84欧州ポルトガル海事局軍事
85欧州ルーマニア国境警察国境
86欧州ロシア連邦保安庁
国境警備局
国境
87欧州スペイン治安警察海上業務隊治安
88欧州イギリス王立沿岸警備隊独立
89欧州ウクライナ国境警備隊国境
90アフリカアルジェリア海軍
沿岸警備局
軍事
91アフリカベナン海軍軍事
92アフリカカメルーン海軍軍事
93アフリカコモロ沿岸警備隊独立
94アフリカジブチ沿岸警備隊独立
95アフリカエジプト海軍軍事
96アフリカガーナ海事局独立
97アフリカケニア沿岸警備隊独立
98アフリカケニア海事局独立
99アフリカマダガスカル海軍軍事
100アフリカモーリシャス警察隊
:国家沿岸警備隊
警察
101アフリカナイジェリア海事安全庁独立
調整
102アフリカセネガル
海上安全・治安・海洋環境保護
調整担当高等庁
調整
103アフリカセーシェル国防軍
沿岸警備隊
軍事
104アフリカシエラレオネ海事局独立
105アフリカソマリア沿岸警備隊独立
106アフリカ南アフリカ海上安全局独立

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