映画『シン・ゴジラ』に描かれなかった海上保安官たちのストーリーを想像してみました。
はじめに
前回に引き続き、
『シン・ゴジラ』における海上保安官たちのあれこれを想像していきます。
今回は、
巨大不明生物が東京湾に現れた翌日から、その名前が判明するまでのストーリーです。
なお、
今回の記事では次の資料を参考にしています。
書籍『ジ・アート・オブ・シンゴジラ』
・p334-335 時間香盤表
・p332 会議室等における席次表
・付属『完成台本』
書籍『シン・ゴジラ機密研究読本』
マイマップ『シン・ゴジラ 襲撃マップ』
海上保安庁HP『東日本大震災への対応の記録(平成24年1月)』
11月4日(金)
巨大不明生物の出現から一夜明けて。
花森防衛大臣らが総理に生物の捜索状況を報告しています。
14:00 | 官邸・総理執務室 |
花森 防衛大臣 | 巨大不明生物は離岸後、 金谷沖の東京湾底に 潜行したと推測されます。 |
財前 統合幕僚長 | 現在、 監視体制を強化し、 千葉沖と相模湾の哨戒を 海自が遂行していますが、 相模トラフに潜伏中となると 早期発見は困難です。 |
この報告の際に、
柳原国土交通大臣や笹上海上保安監の姿はありません。
もちろん、
巡視船艇も航路哨戒を行っていたと思います。
しかし、
生物の行方を追う任務よりは被災した沿岸部での作業に注力していたのではないでしょうか。
前回の記事でもお伝えしたとおり、
巡視船には水中を探査するソナーが装備されていないので。
一方で海における人命救助や、
航路標識の維持復旧は海上保安庁の業務です。
後は流出船舶などによって閉塞した航路を啓開しなくてはなりません。
よって、
ここは海上自衛隊と役割を分担したということなのでしょう。
11月5日(土)13:00
巨大不明生物の出現から一日おいて、巨災対メンバーが集められます。
この中には、
国土交通省の竹尾 保危機管理・運輸安全政策審議官ら4人を確認できます。
竹尾審議官は「鼻つまみ者」のセリフの所で、顔がアップになる人です。
ちょっとここで脇道にそれます。
竹尾審議官が着ている防災服に注目してみてください。濃い青地に襟や脇部分が赤いデザインです。
これは国土交通省で実際に使われている物とそっくりです。
このように各省メンバーの個性を出すアイテムとして、防災服に着目した製作陣の発想がすばらしいですね!
なお、
危機管理・運輸安全政策審議官がどのくらい偉い役職かと言えば。
国土交通省組織令
第20条
大臣官房に、(略)
危機管理・運輸安全政策審議官一人、
(略)を置く。7 危機管理・運輸安全政策審議官は、命を受けて、国土交通省の所掌事務に関する危機管理及び運輸の安全の確保に関する政策に関する重要事項についての企画及び立案並びに調整に関する事務を総括整理する。
国土交通省組織令 | e-Gov法令検索
…よくわかりません。
(>_<)
ただ、
調べてみるかぎりでは、
国土交通省の大臣官房長や局長よりは下、
課長よりは上といった感じでしょうか。
つまり。
巨災対の中では外務省の小松原総合外交政策局長と経済産業省の町田製造産業局長に次いで、竹尾 大臣官房審議官が高い地位にあるということですかね。
話を元に戻します。
巨災対ではさっそく生物に関する分析が始まりました。
ちょうどその頃、
横須賀海軍基地から原子力空母が出港したとの情報が。
13:00 | 巨大不明生物 特設災害対策本部 (二階会議室) |
尾頭 環境省 課長補佐 | あれだけのエネルギー…、 まさか核分裂? |
安田 文科省 課長 | 冗談ポイです、 尾頭さん。 あり得ませんよ。 |
13:30 | 神奈川県 横須賀沖 |
矢口 巨災対 事務局長 | 横須賀の 米空母が緊急出港? |
この空母出港シーンは過去の映像を流用しているようです。
空母に付き添うように並走しているのは巡視艇だと思います。
おそらくは、
【横須賀海上保安部】の放射能調査艇【MS01きぬがさ】ではないでしょうか。
映像が荒いのでちょっと自信はありませんが…。
ちなみに、
MSは【Monitoring boat Small】の意味。
原子力艦船の入出港に合わせ、その艦船を追尾して調査をするのだそうです。
(佐世保海上保安部 業務紹介より)
劇中では米空母が緊急出港したので、【きぬがさ】もきっと慌てたことでしょう。
((((;’_’)/ マッテー ((((´_ゝ`)
15:00~16:00
そうこうしている内に、
アメリカからカヨコ・アン・パターソン特使が来日しました。
そして、
特使は牧 悟郎氏の行方を調査するよう矢口副長官に依頼します。
さらにその依頼は警察庁に託されます。
15:00 | 東京都千代田区 中央合同庁舎2号館 警察庁長官官房長 執務室 |
本部 警察庁 刑事局長 | こんな時に人捜しですか? |
沢口 警察庁 長官官房長 | 矢口副長官からだ。 彼の先代には世話になった。 最優先で頼む。 鑑取りに どれだけ人を割いても構わん。 |
その結果。
この『シン・ゴジラ』
最大の奇跡が起こります!
16:00 | 官邸・官房副長官室 |
カヨコ 特使 | さっすが、 おばあちゃんの国。 仕事が速い。 |
矢口 | 先日来、行方不明。 羽田沖で漂流していた 彼の小型船が無人状態で 海保に保護されています。 |
一昨日の生物の出現以来、
安否不明だった【はまなみ】のその後が明らかに!
ここでグローリー丸を海上保安庁が保護していることが報告されます。
さらに警察庁作成の『身上調査報告書』の2ページ目の写真は、物語冒頭で隊員Aが撮影していたビデオの静止画のようです。
さらにさらに。
グローリー丸の船内にあった遺留品についても、矢口副長官からパターソン特使に渡されます。
ということはですね。
グローリー丸に移乗していた3人も、
【はまなみ】にいた船長たちも、
無事に生還していたんじゃないでしょうか!?
そう思いたい!
\(^o^)/
11月3日 ~そのとき彼らは~
では、
時間をさかのぼって、
色々と想像してみましょう。
矢口副長官の言葉から、
グローリー丸は転覆沈没することなく、横浜海上保安部の管理下に置かれているようです。
ということは、
当時付近にいた【はまなみ】も水蒸気爆発の直撃を免れて、帰港できていると思われます。
おそらくは水蒸気爆発の風と波に、一緒に押し流されたのではないでしょうか。
そして運のいいことに沿岸部近くまで流れ着いたとか。
そして、
一旦は安全な場所にグローリー丸を固定した後、直ちにその後の業務に従事したはずです。
では、
グローリー丸にいた隊員たちは、
どうなっていたのでしょうか?
一番心配なのは、
甲板にいて水蒸気煙を直に浴びたC隊員です。
ただの水蒸気とは言え、
もし100度近い温度であれば顔や腕がやけどしそうです。
後は熱気を吸い込んで、
むせてしまって海中転落の危険もありそうですね。
ただ、
ビデオ映像が途切れる最後の瞬間に隊員Cから「熱っ!」という声は聞こえません。
なので、もしかしたら
そこまでの温度ではなかった…、
と思うことにします。
(´-ω-`) ご無事でなにより
この国の優秀な捜査機関の職員たち
さて、
奇跡はこれで終わりません。
そもそも警察庁が捜査を開始してから、
(設定上は)1時間でグローリー丸漂流にまでたどり着いています。
それはまだ良いとして、
遺留品の現物まで官邸に持ち込まれている。
仕事が速すぎませんか!?
(笑)
いくらこの国の捜査機関が優秀だからと言っても、前代未聞の生物が大暴れした2日後です。
刑事局長がもらしたように、
「こんな時に人捜しですか?」という混乱状況だったはず。
さらに普通に考えて、
遺留品は【横浜海上保安部】で保管すると思われます。
それを東京都千代田区の霞が関まで運ぼうすると、
電車・車いずれにせよそれだけで約1時間はかかるのです。
では改めて、
1時間以内に調査報告をまとめるには、どんな奇跡が起きればいいのでしょうか?
まず、
11月3日の生物が去った当日夜か翌日に、【はまなみ】乗組員らはグローリー丸の遺留物とともに【横浜海上保安部】に戻ったとします。
そこで、
漂流船の詳細情報の照会と、
海中転落したと思われる人物が行方不明者リストに載っていないか調べたのではないでしょうか。
通常であればそれで終わり。
…のはずが、
異常に勘の鋭い【はまなみ】乗組員がいたのでしょう。
「あれ?もしかして
この船とあの生物って、
何か関係があるんじゃない!?」
Σ(゚Д゚) ハッ!
ということで、
11月5日(土)に【海上保安試験研究センター】にグローリー丸の遺留品や付着物・残存海水サンプルを持ち込むことなったのでした。
また同時に、
捜査機関の横のつながりでグローリー丸の所有者:牧 悟郎氏について警察にも念のため情報提供しておいたのではないでしょうか。
そして、
立川市にある【試験研究センター】へ行く途中で、海上保安庁本庁にも偶然立ち寄っていた。
ちょうどその頃。
海上保安庁のとなりの警察庁。
そこでは刑事局職員が、
牧 悟郎氏に関する調査指示を受けていたところでした。
そしてすぐに、
「あれ?これって
昨日海保から情報提供があった
人物じゃない?」
…ということで、
さっそくとなりの海上保安庁に電話連絡。
すると、
「該当人物の資料なら今ここにあるよー?」
「ええー!マジですか?
すみませーん、
ちょっとお借りできますー?」
…という、
会話があったかどうかは定かではありませんが、これならわずか1時間での調査報告がギリギリ可能だと思います。
(;^ω^)
その結果、
パターソン特使からは、
「さっすが!」とお褒めの言葉をいただくことができたのでした。
嵐の前の静けさ…
こうして巨災対と日本政府は【呉爾羅】の情報を知ることができました。
そして、それは矢口プランとヤシオリ作戦へとつながっていきます。
これは【はまなみ】乗組員が混乱の中にあっても、通常通りの仕事をしつつ、加えて機転を利かせていたおかげとも言えます。
しかし、
官邸でのやり取りなど知らない【はまなみ】隊員ABCは、その後のテレビ報道を観ながら
「へぇ、あれってゴジラって言うんだー。」と思ったことでしょう。
さて。
巨大不明生物の行方は依然として不明であるものの、当初の混乱は徐々に解消されつつあった翌週の月曜日。
あの巨大不明生物ゴジラが
再び現れるのでした…。
つづく
【参考動画】
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