令和3年(2021年)9月4日、
巡視艇みやかぜの乗組員が溺れかけている犬を救出しました。
犬の救助要請に海保が奮闘
犬の救助要請に海保が奮闘 「大丈夫?」と震える犬を抱き上げた:朝日新聞デジタル (asahi.com)
「大丈夫?」と震える犬を抱き上げた
高絢実2021年9月9日 11時18分
愛知県知多市北浜町の美濃川の河口で4日、岸壁に取り残された犬を名古屋海上保安部の乗組員らが救助し、保安部が救助の際の動画を報道陣に公開した。
管理課によると、4日午後2時ごろ、飼い主の夫婦から「岸壁近くに犬が取り残されているので救助してほしい」と通報があった。巡視艇みやかぜの男性乗組員3人が、付属艇で現場を捜索。
午後3時半ごろ、人が近づけない護岸のわずかな部分に犬がいるのを発見した。
(中略)
その後、犬は無事に飼い主の元に返された。犬を救助するのは珍しいという。
はじめに
ニュースとしては少し前の話ですが、この救出劇を覚えている方もおられることと思います。
概要は報道された記事のとおりで、3人の海上保安官の奮闘について多くの反響がありました。
その反響はおおむね好意的なもので、犬が無事保護されたことを安堵する声や、保安官と飼い主とのやり取りに感動したなどのコメントがSNSなどに掲載されていました。
私自身、
実家で犬を飼っていたこともあり、
今でもイヌ派?ネコ派?と聞かれればイヌ派です。
イヌはけなげでかわいいんですよ…。
(遠い目)
まぁそれはさておき。
人間であれ動物であれ、
どんな命でも大切です。
その大切な命を救ってくれる方々には感謝しかありません。
私も動画を視聴して、飼い主さんと同じくらいお礼を言いたいような気持ちになりました。
本当に無事に保護されてよかったな~と思うわけです。
そしてとにかく、
この動画はまるで良くできた短編ドラマのような名場面にあふれています。
そのため、
観たことがある方にも、まだの方にもこの救出劇のすばらしさをお伝えしたいと考えました。
そこで今回はこの動画の音声を書き起こして、セリフを追いかけてみたいと思います。
ただし、
これは私がヘッドフォンで頑張って聴き取っただけのものです。なので、うまく聞き取れなかった部分もあります。
そこはどうぞご容赦ください。
登場人物紹介
まず、
今回の元動画は名古屋海上保安部から報道機関に提供されたもののようです。
その動画は各報道機関で編集されており、取り上げられている場面も報道機関によって異なります。
本記事では、救出劇から飼い主とのやり取りまでの要点がまとめられている『毎日新聞版』の動画音声を書き起こしています。
・A保安官
本動画の主人公的存在。
ビデオカメラの保持者でもある。
遠目から犬種を言い当てる、犬への声かけが優しいなどの点から、かなりの動物好きではないかと推測されている。
常に微笑を絶やさない。
3人の保安官の中で一番下のポジションと思われる。
・B先輩
この救出任務のリーダー的存在。
携帯電話で巡視艇あるいは指令元へ現状報告をしている。タオルを気遣うなど細かい優しさが光る。
3人の保安官の中では一番上のポジションと思われる。
・C操舵手
ボートの操舵手。
動画にはあまり写りこんでいないが、彼の細かい操船が今回の救出劇を陰で支えていた。河口付近での上流からの流れと海から寄せる波とがぶつかって、苦労したものと推測される。
3人の保安官の中では真ん中のポジションと思われる。
・ベルちゃん(犬)
シェットランドシープドッグ。
要救助犬。
飼い主との散歩中にリードがはずれ、河口に迷い込んでしまった。
・飼い主の男性&女性ほか
ベルちゃんの飼い主。
飼い犬の救助を海上保安庁に依頼した。
もう一人、飼い主の家族らしき男性もいる。
【動画】岸壁に取り残された犬、巡視艇乗組員が救助 飼い主に届ける
現場到着~発見
A保安官 | あー、いました!左端です。 |
B先輩 | あっ。ああっ?どこ? |
A保安官 | えーと、 あのシェットランド シープドッグみたいな。 コ、コリー犬みたいな。 左ぃ~です。 |
C操舵手 | 橋の下? |
A保安官 | 橋の手前ですね。 (河口反対側にいる男性に向かって) あの犬ですよね!? |
男性 | そうです! |
B先輩 | あぁ!あれね!ハイハイ! |
男性 | そうあれです! |
救出作業開始~逃亡~
B先輩 | ワンちゃんおいで! ワンちゃんおーいで。 |
A保安官 | 大丈夫? |
B先輩 | おいでー。 ワンちゃんおいでー。 おいでー。入りな! |
A保安官 | おいで? |
B先輩 | そっちの奥に行かせるか。 そっちより。 そっちに逃げられると困るから。 |
A保安官 | ちょちょっ…。んー…。 もう…、 お、降りて拾っていいですか? |
B先輩 | いいよ。 (C操舵手に向かって) あと1メーター。 |
C操舵手 | はい。 |
A保安官 | 降りまーす。 |
おびえた犬が逃げ出す | |
A保安官 | やっば!(笑) |
B先輩 | マジかぁー! |
A保安官 | 泳げるなぁ(苦笑) ふふふ(苦笑) |
犬がさらに泳いで逃げて行く | |
A保安官 | あーそれ以上奥行かれるとキツイな。 |
B先輩 | あ、マジで? |
A保安官 | (結構?)泳ぐ(笑) あ、バックで。 (C操舵手に後進を促す) |
B先輩 | いいよ、いいよ、いいよ。 |
再挑戦~救出成功
B先輩 | お前、そこ上がれるか?行けんか? |
A保安官 | 上、持ってください。 |
A保安官が岸壁に降り立つ | |
A保安官 | よしっ。よいしょ。 (犬を持ち上げる) (大量の水がしたたり落ちる) あーこのまま載せちゃいます。 よいしょ。 (ボートの縁に犬を降ろす) |
B先輩 | 降りんなよ?降りんなよ? ワンちゃん降りんなよ? |
A保安官 | 大丈夫? |
B先輩 | ちょっととりあえずこっちおいで。 タオルある?タオル。 |
A保安官 | …ないです。 |
B先輩 | ないか。 ワンちゃん大丈夫か? |
A保安官 | よいしょー!(ボートに乗り込む) |
B先輩 | オッケーオッケー。 とりあえず後進に入れようか? |
C操舵手 | はい。 |
B先輩 | ちょう待ってな。 ワンちゃん降りるなよ? ***降りるなよ? えーっと、そっち行こうか? |
C操舵手 | はい。 |
犬が濡れた体をブルブルと振って、 しずくが飛ぶ | |
A保安官 B先輩 | ひぃゃあー(笑) いやー(笑) |
A保安官 | (うれしそうに笑う) んふっふっふ。 |
飼い主の元へ~撤収
B先輩 | 行くよー?よし。とりあえず…。 |
飼い主 女性 | ありがとうございました。本当に…。 |
A保安官 | ピロ(?)あるいはヒロ(?) ※聴取不能 |
飼い主 男性 | 10日間いなくなっとったんだで…。 |
B先輩 | あーそうなんですか。 |
飼い主 男性 | だいぶ弱っとるやん。 |
A保安官 | このまま上持っていきましょうか。 |
B先輩 | (男性を制止して) あぁいや、 そのまま上持って上がりますから。 |
A保安官 | 危ないんで。危ないんで。 |
B先輩 | とりあえずちょっと待っとって。 |
C操舵手 | はい。 |
A保安官 | ここで降ろしていいですか? |
飼い主 女性 | すみません! いいですか?ちょっと入れさせても。 もぅベルちゃん!心配した~! |
A保安官 | …あぁ 10日前からいなくなっちゃってて~、 っていうことですか。 |
飼い主 女性 | そうなんですよ。 ずっと探してたんだけどお。 |
A保安官 | あー、 なんか散歩中に いなくなっちゃった感じですか。 |
飼い主 女性 | 首輪リード、ピッと抜いちゃって。 |
A保安官 | ああー。 |
飼い主 女性 | ありがとうございました~、本当に。 お礼は、どうさして…。 |
A保安官 | いやあもう、 こういう仕事なんで。 |
B先輩 | イヤイヤイヤ…大丈夫です。 |
B先輩 | すいません!はい。 |
飼い主 女性 | (何度もお辞儀をしながら) はい、ありがとうございました。 もう本当に助かりました~。 |
B先輩 | いえいえどうも。 じゃあご安全に。 |
飼い主 男性 | すみません。ご安全に。 ありがとうございました。 |
B先輩 | いいよ。 (先にボートへ乗るよう促す) |
A保安官 | ああすいません。 |
B先輩 | (A保安官とのすれ違いざまに) おつかれさん。 |
A保安官 | (ボートに戻って) …ビッショビショや。 ふふ(笑) |
注目ポイントの解説
解説…というほど、
何か解説が必要な動画ではありませんが、私なりの注目ポイントについて語ってみます。
あのシェットランド
シープドッグみたいな。
視聴者の多くの人が注目していたセリフ。
A保安官はかなり遠くの距離から正確に犬種名を言い当てていました。
もしかしたら飼い主からの通報の時点で情報が寄せられていたのかもしれません。
しかし、
そうすると他の2人に対して
「〇〇みたいな。」という表現は少し不自然な気がします。
そもそもですね。
しぇっとらんどしーぷどっぐ!
って、皆さんサラッと言えますか??
(;^ω^)
これは同じ犬種を飼っている家庭の方でないと、なかなか難しいのではないでしょうか。
さらに。
シェットランド~と言われて具体的に思い浮かぶでしょうか?
実際にあの毛の長い茶色と白の犬を見れば、ああ~あれね!はいはい!とわかるのですが。
ちょっと、
ウィキペディアで画像を観てみましょう。
ラフ・コリー→
シェットランド・シープドッグ (Shetland Sheepdog) は、スコットランドのシェトランド諸島を原産地とする犬の品種のひとつ。ラフ・コリーとよく似た外観を持つが、より小型である。
シェットランド・シープドッグ – Wikipedia
シェルティー(Sheltie) の愛称で呼ばれる。
左の小さい方がシェットランド。
右の大きい方がラフ・コリー。
どうやら、
A保安官が言い直していた「コリー犬」とはラフ・コリーのことのようです。こうしてみると姿はそっくりですが、大きさが全然ちがいますね。
というより「コリー」って言ったら、
白黒のボーダー・コリーのことしか私は頭に浮かばなかったですね。
こんなに犬にくわしいなんて、
A保安官、
ぜったいイヌ好きやん…。
(*´ω`*)
タオルある?タオル。
B先輩のセリフ。
A保安官にくらべてあまり犬に慣れていない様子のB先輩。
とりあえずビショビショに濡れた犬の体を拭いてあげようとしたのかタオルを探します。
しかしその後、
A「…ナイデス。」(ー_ー)
B「無いか。」(;´・ω・)
…と会話が続きます。
ちょっとかわいそうで笑えてしまいます。
いやあもう、
こういう仕事なんで。
無事、
飼い犬が戻ってきたことに感謝しきりの飼い主さん。
立ち去ろうとするA保安官に対して「お礼をどのようにさせてもらったらいいでしょうか?」という旨の言葉を言いかけました。
すると、
礼には及ばないと即座にこのセリフ。
「こういう仕事なんで。」
カッコよすぎませんか!!??
(>_<)
しかも、
B先輩もほぼ同時にその必要はないと反応しています。
完璧な受け答え過ぎてお見事!としか言いようがありません。
おつかれさん。
A保安官とのすれ違いざまに、B先輩が短く小さな声で言ったセリフ。
私は当初この声かけに気づきませんでした。
今回、音声を書き起こす際にヘッドフォンで聴いて初めて気づいたのです。
この一連の救出作業に当たってはA保安官の活躍が目立ちますが、最後の最後にB先輩の何でもない一言をとても温かく感じました。
もちろん、
ラストの「ビッショビショや。」もちょっと可笑しくて、さわやかなオチとなっていて大好きです。
3人の海上保安官のみなさま、
本当におつかれさまでした!
(∪^ω^)
まとめ
以上、
海上保安庁の救出劇動画の音声書き起こしでした。
あまりにも素敵な動画だったので、みなさんに広く知ってもらえるといいなと思います。
また、こうした記録がいつか忘れ去られてしまうのはおしいので、この記事を作成することにしました。
(動画はいつか視聴できなくなりますが、文字にしておけば多少は長くインターネット上で残ると思って…。)
日本の片隅で
小さな命を救うために奮闘した、
やさしい海上保安官たちがいたことを
長く覚えておきたいものです。
補足
今回とりあげた『毎日新聞版』以外にも、別の報道機関による動画が残されています。動画の編集範囲が異なるので、これらを視聴することでほぼ全編を観ることができます。
①中日新聞版
作業開始~救出まで。
C操舵手の苦労がうかがわれる。
最後のA保安官の「大丈夫だよ~。」がやっぱり優しい。
②朝日新聞版
作業開始~飼い主の所へ送り届けるまで。
おまけ
巡視艇みやかぜの普段のパトロールの様子。
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