船の世界は陸上とは異なる点が多いです。
船の性能をよく知るための単位について調べてみました。
はじめに
これまで【しきしま】にまつわる海里(航続距離)、ノット(速力)について解説してきました。
今回も最後の難関【総トン数】の話です。
前回は【しきしま】の話題にたどり着かなかったので、今回こそは行けるでしょうか。
それではさっそく始めていきましょう。
総トン数と海上保安庁
前回のおさらいですが、
船の大きさ(グレード)を表すために2つの考え方がありました。
船の容積を指標にする考え方と、
船の重量を指標にする考え方です。
この容積を指標にする【容積トン数】グループの一つが【総トン数】でした。
さらに日本の船舶は法律によって、わが国独自の「総トン数」という基準で船の大きさを表しています。
もちろん、
海上保安庁の船艇も例外ではありません。
船舶法
船舶法 | e-Gov法令検索
(明治32年法律第46号)
第1条 左の船舶をもって日本船舶とす
一 日本の官庁または公署の所有に属する船舶
二 日本国民の所有に属する船舶
(略)
※読みやすいように原文を適宜改めています
船舶のトン数の測度に関する法律(通称:トン数法)
船舶のトン数の測度に関する法律 | e-Gov法令検索
(昭和55年法律第40号)
第二条(他の法令との関係)
船舶のトン数の測度の基準については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
第五条(総トン数)
総トン数は、我が国における海事に関する制度において、船舶の大きさを表すための主たる指標として用いられる指標とする。
日本の官庁である海上保安庁。
その所有に属する船舶は当然に『船舶法』『トン数法』の適用を受けます。
だから巡視船艇の要目には「総トン数」が表示されているわけですね。
基準排水量と海上自衛隊
さて、ここで一つ疑問が。
海上保安庁と同じく、
日本の官庁である防衛省・海上自衛隊の艦艇も「総トン数」が使われているのでしょうか?
答えを言うと、
海上自衛隊の艦艇は『船舶法』『トン数法』の適用除外となっています。
自衛隊法
自衛隊法 | e-Gov法令検索
(昭和29年法律第165号)
第109条(船舶法等の適用除外)
2 船舶法、船舶安全法、船舶のトン数の測度に関する法律及び小型船舶の登録等に関する法律の規定は、海上自衛隊(防衛大学校を含む。)の使用する船舶については、適用しない。
(略)
これを車でたとえると。
警察のパトカーは『道路運送車両法』の適用を受けて、民間の車両と同じナンバープレートを装着します。
その一方で、
自衛隊の車両は『自衛隊法』の適用を受けて、特別な独自のナンバープレートを装着することになっています。
この関係と同じですね。
なお、
海上自衛隊の艦艇は「基準排水量」~トンという指標でその大きさを表しています。
船の重量を指標にする【重量トン数】グループの一つが【基準排水量】です。
さらに海上自衛隊では(名称は同じながら)独自の「基準排水量」という基準で船の大きさを表しています。
ああ、ややこしい。
(海上自衛隊の艦艇については詳しい方におまかせします…)
一応、整理すると、
↓こんな感じになります。
この表からわかるように、
海上保安庁の船艇における~トンと、
海上自衛隊の艦艇における~トンでは異なる指標を使っています。
さらに、
他国の海軍艦艇や沿岸警備隊の船艇では【重量トン数】グループの指標を使っているのが一般的です。
つまり、
巡視船の大きさは民間船舶との比較はできますが、軍艦などとは一概に比較できません。
このあたりは注意が必要ですね。
しきしまと総トン数
みなさま、
お待たせいたしました!
ようやく【しきしま】の総トン数までたどりつきましたよ。
\(^o^)/やったー
改めて、
【しきしま】の総トン数は6500トン!
これは重量ではなく容積の大きさ!
これに次いで大きいのは【しゅんこう】の6000トン。
いや~、
やっぱり大きい船はそれだけでロマンがありますね♪
スペック上の数値の大小を気にせずとも、
実体としての【しきしま】のなんと雄大で美しいことか。
…と思いながら、
『世界の艦船』№933海上保安庁特集号を読み返していたら、
(;゚Д゚)どどどいうこと?
【しきしま】の総トン数は6500トンじゃないの!?
海上保安庁のHPと『世界の艦船』に掲載されている数値のどちらが正しいの!?
こうして、
奥深きトン数の世界はまだ続くのでした…。
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